ULTRA BUTTERFLY
「あぁあぁ、可哀想に」
さしてそんなことは思っていないような声で、DTOが呟いた。
今にも壊れそうな美しい羽が風に揺れる。
屋上の柵。
其処にその罠があった。
規則正しく編まれた網に掛かった哀れな蝶。
じたばたと蝶は最後の力を振り絞って藻掻く。
藻掻けば藻掻く程、更に網に絡まるとは分かっていないんだろう。
可哀想に、と もう一度DTOは言った。
差し詰め露に濡れて光る蜘蛛の巣に引き寄せられてしまったのだろう。
それが罠だとは思いもせずに。
ガチャリと、屋上の重い扉が開いた。
「先生、用って何ですか?」
申し訳程度に敬語を使ってDTOの生徒である、彼の待ち人が現れる。
何か咎められるようなことでもしただろうか、と
少し困った顔をする。
そんなつもりはないとDTOは人の良さそうな笑顔を浮かべた。
一匹の蝶が、蜘蛛の巣に掛かろうとしている。
恋する51のお題 23:危険人物
(05.08/01)