別れとは唐突なものである。

元より未来というものは目には見えないし感じることも不可能なのだから

出会いだって何だって唐突なものであることに変わりはないが。


だとしても別れは出会いよりも唐突で、衝撃的で、悲しいものである。










単純難解詩曲










言い逃げとは酷いじゃないか。

俺に何も言わせず去るなんて。


是が俺の言い分。

だけど実際逃げたのは俺だと心の何処かの俺が言う。


目の前にはお前の女の子らしい丸い字で書かれた手紙。

一応俺の彼女と呼べる立ち位置に居た、彼女の場所を奪ったのは俺自身である。

さよならしたのは嫌いだからじゃない。一言で言うならばエゴだろうか。

強く何か望む物があったのかと問われても、何も思い浮かばない。

彼女からの手紙はただ彼女が書いた文字を伝えるだけ。

それ以上も以下も伝えちゃくれない。


彼女の手紙には俺を貶したり怒ったりするような言葉は何もなかった。

どうやら俺の勘違いだったとか? 間抜けな話だ。

深く考えられない(勉強は別だけど)俺は彼女の意図は汲み取れない。

でも彼女が言っているのはこういうことだ。


別に俺は無理に彼女から離れる必要はないらしい。


単純明解、簡単な答え。清々しいくらいだ。

普通にしようと思っていたけど不器用な俺にそれはキツかったらしい。

此処数日彼女とまともに口を聞いていないから、完璧に彼女に依存している俺はかなり危険な状況だ。

簡単に言えば、死にそうだ。精神的に。

そんなことを言っていて、今回のことで本当に彼女を失ったら俺はどうするつもりだったのか。

今回は大丈夫でも、なら次回は?

...いや、其れを考えておくのは止そう。思考をシャットアウトするのは簡単な作業だ。

嫌なことは考えないに限る。特に其れが予想すら付かないことならば。


無造作に俺の下駄箱に入れられていた手紙は少し歪んでいる。

マフラーと眼鏡と学生帽で隠しきれなかった素肌を北風がさす。寒い。

問題は明日君に会った時のことだ。

不器用な俺はちゃんと普通に接することができるだろうか。

いや、それを深く考えるのも止そう。


せめて明日君に会ったら、何でもなかったかの様におはようと言おう。












恋する51のお題 10:何でもない

(05.10/27)