漠然としか思い出せない想い出の中。

一人で居る時 何時も僕は何をしていたんだっけ?










ビタースイート










蒼い蒼い月光に照らされた部屋は 同じく蒼で染まる。

静かな部屋に充満する憂鬱の色。

一人の夜はこんなにもつまらない物だった?

開け放たれた窓から差し込む冷たい風が 音も無くカーテンを揺らす。

ふと思い出す昼間の光景は眩しい光の向こう側に

逆光で彼女の表情が見えない。

予想すら出来ない表情で、君が零した言葉はもう 曖昧な意味しか覚えていない。

「...なんて 言われたんだっけ?」

呟く言葉に力はない。

正常に作動しない思考回路を無理に動かせば 考えてしまうのは君のこと。

君の表情も明確な言葉も、覚えていた処で なんら意味は為さないのだろう。

例え君があの時悲しげな顔をしていたとしても

僕は動いていなかっただろうから。

別に彼女を好きじゃなかった訳じゃない。

確かに、この世界でいちばん 好きだった。


僕は今まで彼女を守る事に全力を注いできた。

それは、完全に空回っていた様だけど。

歪んだ想いは屈折を繰り返し消えてしまったのだろう。

頬を伝う暖かい物の正体なんて知りたくもない。


カチカチと規則的に鳴り響く 耳障りな時計の音は

蒼い蒼いこの世界が 光で染まるまでのカウントダウン

差し込むであろう恵みの光は飽くまで僕には白々しい。

白く染まる部屋の中に 存在を主張する異物。


受け継ぐは 蒼い蒼い憂鬱の色。


どうでもいい、なんて

どうにもできない事を隠す為の言い訳で、


諦める以外の方法が思い付かない僕は

彼女が傷付く元凶が 彼女の元から離れた事を素直に喜ぶ事にしよう。


夜明けを告げる 鳥の声がきこえる。

闇の中にいる僕を置き去りに、もうすぐ世界に朝がくる。



『どなたか何処かで泣いている彼女を

 みかけたとしたら そっと抱いてやってよ

 その娘はいい娘さ よろしく』











ビタースイート/ポルノグラフィティ
(05.02/06)